このたび、「RICORDI DI CAPRI(カプリの思い出)」第3章をお届けします。
歴史を振り返り、カプリ島にゆかりのある魅力的な人物や出来事、訪れた人々、そして名所をご紹介。
今回は、カプリ島が世界に誇る神秘的な”青の洞窟”にまつわる物語です。

小さくても、決して魔法に劣ることはありません。
わずか2メートル幅、1メートルの高さしかない狭い入口。
干潮時であっても入るためには、小舟の底で身体ごと横になりくぐるしかない、まさに秘密の扉のような空間です。
波が高い日や風の強い日には、神々は訪問を許してくれません。

洞窟の入り口
しかし、その狭い波間の道を抜けると、そこに広がるのは、この世のものとは思えない蒼い世界。
その美しさは、見る者を一瞬に虜にし沈黙させます。
神秘的な輝きは、自然が織りなす完璧な光学現象によるものです。
海水のフィルターを通した太陽光は、青い光だけが洞窟の奥深くまで到達し、白い砂底からの反射がその青をさらに美しく映し出します。

海中の隙間から光が差し込む仕組みの図
現代の観光客が息を呑むこの光景を、2000年前の古代ローマ人たちも同じように眺めていました。
青の洞窟は、当時「海の妖精たちの聖域」と呼ばれ、皇帝ティベリウスの私的な入浴場として使用されていました。
そして海神を祀る神殿としても役割を果たしていました。
1960年代には洞窟の底からネプチューンやトリトンの像が引き上げられ、今もアナカプリのカーサ・ロッサ博物館で展示されています。
少なくとも4体以上の彫像が、まだ洞窟の深い海底に眠っていると考えられています。

洞窟の底から引き上げられた彫像
しかし、ローマ帝国の衰退とともに、グロッタ・アズーラ(青の洞窟)も時の流れに飲み込まれてゆきます。
中世の人にとって、青の洞窟は絶対に行ってはいけない所でした。
地元の漁師たちは「グラドーラ」(非常に危険な場所)と呼び、悪霊や魔女が住む呪われた場所として避けていました。
偶然にも、1826年にドイツの画家エルンスト・フリースとアウグスト・コピッシュが洞窟を「再発見」し、長い間忘れ去られていた古代の聖域が、再びカプリ島を訪れる人々の心を捉え始めました。

アウグスト・コピッシュ:画「青の洞窟」(1848年)
香りペアリング
海の香り、神秘的な洞窟で輝く青の煌めきを呼び起こす。
ほのかな潮風の気配を感じる肌、太陽に照らされたローズマリー、そして地中海の波の野性的な抱擁。
カルトゥージア「アマーレ」は、そのすべてのエッセンスをボトルに凝縮しています。