ー1380年代から現代へ守り続ける香り、そして本質とは
イタリア・カプリ島発祥の歴史あるフレグランスブランド「カルトゥージア」。長年、カプリ島外ではほとんど入手できない“幻のフレグランス”と呼ばれていましたが、2000年代初頭より他国への流通が始まり、2022年に満を持して日本に本格上陸、2023年に東京・麻布台ヒルズに直営店をオープンしました。以来、多くのフレグランスユーザーの方から支持をいただいています。
今回は、約1年ぶりに来日した製品開発兼ブランドマネージャーを務めるヴァージニア・ルオッコ氏に、カルトゥージアの魅力やおすすめの香り、この春お目見えする新作フレグランスとその誕生背景について話を聞きました。
ヴァージニア・ルオッコ プロフィール
イタリア・カプリ島生まれ。18歳までカプリ島で育つ。大学では東洋の言語について学び、特に日本の歴史に興味を持ち日本に暮らした経験も。その後カプリ島に戻り、家業である「カルトゥージア」を父より引き継ぎ、生産から広報に至るまで、ブランド全てのマネジメントに携わる。
根底にあるのはブランドへの“愛の物語”
―改めて、「カルトゥージア」の歴史と、ブランドへの想いを教えてください。
ブランド誕生の歴史は1380年のジョヴァンナ・ダンジオの時代まで遡り、その香りの魅力は何世紀にもわたって語り継がれてきました。
当時、女王の島への来訪を祝うため、チェルトーザ修道院の修道士たちはカプリ島で最も美しい花々を集めました。 役目を終えて花を処分しようとした際、それらを浸していた水に不思議な香りが宿っていることに気づいたのです。
それから約600年後の1948年、チェルトーザの院長が古い調香のレシピを発見し、教皇の許可を得てそれを一人の化学者に託し再現に向け研究を始めました。
こうして“世界で最も小さなフレグランス・ラボラトリー”が誕生し、修道院を意味するラテン語にちなんで『Carthusia(カルトゥージア)』と名付けられました。
「カルトゥージア」は、その香りの生産からパッケージデザインに至るまで、全て“カプリ島”に軸を置いて製品作りをすることにこだわっています。カプリ島に自生する花々や果実、ハーブなどの素材はもちろん、香りのインスピレーション源は全てカプリそのもの。伝統に基づき、できる限りの工程を職人たちの手で、ひとつひとつ丁寧に作られています。
私自身は、ブランドの根底にあるのは“ラブストーリー”だと考えています。父が子供の頃、修道士と科学者が香りを作っている工房をよく目にしていて、そんなカプリ島での“当たり前の光景”を後世にまで残したい、という父の故郷への愛がこのブランドの経営に携わったきっかけのひとつなんです。2002年より本格的にブランディングに携わるようになりましたが、その当時から今に至るまで、これまで長年受け継がれてきた工房と職人の技術を守り伝えていく、そんなカプリ島への愛の物語がこのブランドには満ちています。
日本では爽やかな香りが人気! 「アマーレ」は、海への恋しさが着想源に
―グローバル市場において、特に人気が高いのはどの香りですか?
ベストセラーは、世界中どの市場でも「メディテラネオ」が一位ですね。日本では特にフレッシュな香りが愛される傾向にあり、「アマーレ」や「コラリウム」なども人気があります。
香りの開発は、修道士たちが生み出してきたさまざまな香りのレシピがベースになっています。そんな伝統と歴史から着想を得て、現代に合った香りにアップデートしているのも特徴です。
―ヴァージニアさんのお気に入りの香りはどれでしょうか。
私の中で特別思い入れが深いのは、「アマーレ」です。この香りを開発した時はコロナ禍で、当時のイタリアはヨーロッパ内でも外出などの規制が大変厳しい状況でした。それまで、毎日散歩に出て海を眺めていたのに、それが制限されることはとても辛かったです。カプリは島なので、海に囲まれた生活が当たり前という中で、海を眺めることを制限されることは、友達に会えないことと同じ。そんな“友達”を恋しく思うような気持ちを、香りで表現したのが「アマーレ」なんです。
ボトルデザインにも、海に対する愛を落とし込んでいます。海洋生物や珊瑚、水中花などのテキスタイルを、イタリアのアーティストであるパオラ・タセッティ氏に描いてもらいました。彼女は、建築、植物学、解剖学といった多分野に造詣が深い方なのですが、実は過去に京都で造園学を専攻しており、日本の美学にも精通しているんです。そんな彼女の繊細かつ幻想的な作品に惹かれ、これまでと異なる総柄のボトルを生み出しました。コロナ禍を経て、再スタートを切るような気持ちも込められています。
―日本では、「メディテラネオ」をはじめ爽やかな香りが特に人気ですが、ヴァージニアさんが日本のお客様におすすめしたい香りは?
爽やかさにフォーカスするなら、イチジクやティーリーフを用いた「イオ カプリ」がいいと思います。ティーリーフ=お茶の香りは日本人の方にも馴染みがあると思うので、気に入っていただけるのではないでしょうか。
これまでブランドにはなかったグルマンの香りの「テッラミア」にもぜひ注目してほしいですね。コーヒーやヘーゼルナッツ、バニラなどが香る温もりある香りです。ボトルデザインにあしらわれた「プルチネッラ」は、ナポリの伝統的なキャラクターであり、象徴的な仮面もまた、際立った魅力のひとつです。
イタリアでは、今のような寒い時期には、自分を温かく包み込んでくれるような香りが好まれる傾向にあります。日本の方には、そんな温かみと爽やかさを併せ持つ「ジェルソミーニディカプリ」もぜひおすすめしたいです。
カルトゥージアでは、軽やかな香りを多く揃えているので、レイヤリング=香りの重ね付けが楽しめる点も魅力だと思います。お気に入りの香りをベースに、色々と試していただき、お気に入りの組み合わせを見つけてみてください。
新たな香り「インテンソ コレクション」が、この春デビュー
―3月下旬には、新たな香りが発売されますね。
このコレクション誕生の背景には、より長く香りが楽しめて高級感や特別感のあるフレグランスが欲しいというお客様からの声がきっかけになっています。朝まとった香りを夜まで保ちたい、という方が昨今増えている印象で、そんなニーズにマッチするような、より上質な体験へと導くワンランク上のフレグランスを作ろうと思ったんです。コレクション名に配した“インテンソ”とは、濃厚・深みがあるといった意味を持つ言葉で、まさにそれを表現した香りになっています。
香りは3種類展開します。カプリ島に自生するバジルを用いた「バジリコ」、鮮やかな黄色の花を咲かせるエニシダを軸にした「ジネストラ」、爽やかな芳香を放つハーブ・銀梅花の「ミルト」です。調香師には、イタリア人のルカ・マッフェイ氏と、パリで活躍するアントワン・リー氏のお二人に依頼し、素材そのものの持つ魅力を存分に生かしながらこれまでにない革新的な香りを表現してもらいました。
ボトルデザインは、香りをイメージしつつ、ブランドの世界観にマッチするカラーリングを選びました。ゴールドをポイントに効かせ、プレシャスなムードを演出しています。ボトルも、小さいサイズへのニーズの高まりを受け、50mLを採用しているのも特徴のひとつです。
このコレクションも、従来のフレグランス同様、日本で多くの方に愛されることを願っています。
―最後に、カルトゥージアのファンに向け、メッセージをお願いします。
この記事を読んで、ブランドのストーリーを気に入っていただけたなら、ぜひ店頭へ足を運んでいただけたら嬉しいです。直接香りに触れていただければ、きっと新しい発見や出合いがあると思います。
イタリア・カプリ島にて、歴史と伝統に基づきハンドメイドで生み出される希少なフレグランス「カルトゥージア」。この春お目見えする「インテンソ コレクション」をはじめ、今後も新たなチャレンジを続けるカルトゥージアに、ぜひご注目ください。
Photo: Yuri Adachi Interview & Text: Misa Haioka
